生前贈与について

贈与は一般的にもよく使われる言葉ですが、法律的には、当事者の一方が他方に対して財産を無償で与える旨を合意することをいいます(贈与契約)。

最近多いのが、相続発生前に被相続人の財産をできるだけ相続人に承継させておき、相続税の負担を抑えるためにする贈与です。
これを死後の財産承継(相続)と比較して「生前贈与」と言ったりします。

ここでは、生前贈与のやり方や注意点などについて解説します。

1.生前贈与のやり方

生前贈与をする主な目的は上記のとおり、相続税という税金の負担を少しでも減らすということにあります。
相続税は、相続財産の額が基礎控除の範囲内(3000万円+600万円×法定相続人の数)であればかかりませんので、将来の相続財産の額がこの基礎控除内に収まるように生前贈与をしていくことになります。

しかし、一方で贈与をすると贈与税という税金が発生することがあります。
贈与税は受贈者(財産をもらう側)一人につき、毎年110万円までの非課税枠があり、これを超えると贈与税がかかります。
ですので、相続人一人につき、毎年110万円以内で少しずつ生前贈与をしていく方が多いかと思います。

また、親族間の贈与の場合には、以下のような特別の非課税枠もありますので、これらを利用してまとまった金額を生前贈与してしまうのもよいでしょう。

◎父母・祖父母などから住宅取得用資金の贈与を受けた場合の非課税枠

◎父母・祖父母などから教育資金の贈与を受けた場合の非課税枠

◎父母・祖父母などから結婚・子育て用資金の贈与を受けた場合の非課税枠

贈与できる財産

財産的価値があるものであれば、基本的には贈与の対象とすることができます。
例えば、現金・預貯金、不動産、株式や投資信託、時計や貴金属類、ゴルフ会員権など種類は問いません。

ただ、不動産や株式などは、勝手に第三者に譲渡をすることが禁じられている場合がありますので、注意が必要です。
例えば、不動産に銀行の抵当権が設定されている場合には、銀行の承諾なしで不動産を譲渡してはならないという内容の文言が契約書に記載されているでしょうし、中小企業の株式については株式の譲渡制限が設けられている場合がほとんどです。

なお、不動産を贈与する場合、不動産を丸ごと全部贈与する必要はありません。不動産の持分の贈与も可能なので、例えば、不動産の持分20分の1だけを贈与するといったこともできます(贈与税の110万円の非課税枠内で収めるためには、持分の一部を贈与することが多いです。)。

2.生前贈与の注意点

生前贈与は、相続税の負担を軽減するために有効ですが、注意点も存在します。

生前贈与の注意点①  直近の贈与は相続税の対象となる

相続開始前(被相続人の死亡前)3年間の間にされた贈与については、110万円の範囲内であったかどうかにかかわらず、原則として相続税の課税価格に加算されることになります。

生前贈与の注意点②  当事者双方に判断能力が必要

生前贈与は、贈与契約という契約であるため、当事者双方(贈与者・受贈者)にしっかりとした判断能力が必要になります。
そのため、贈与をする親が高齢で認知症になっている場合などには、生前贈与をすることは難しくなってきます。

なお、成年後見制度を利用して生前贈与をすることはできません(後見人には本人の財産を贈与する権限はないため)。

生前贈与の注意点③  生前贈与を形に残しておく

生前贈与をする場合には、しっかりと贈与契約書を作成しておき、現金は手渡しではなく振込みで、不動産の場合には名義変更の登記(贈与登記)をしておくようにしましょう。

生前贈与をしたということが形として残っていないと、税務署が贈与の事実を認めてくれない可能性があります。

生前贈与の注意点④  定期贈与にならないようにする

定期贈与とは、「総額500万円を毎年50万円ずつ10年間に渡って贈与する」というように、定期的な給付を目的とした贈与のことをいいます。

定期贈与の場合には、毎年50万円を贈与したものとして扱われず、初年度に500万円を贈与したものとして扱われます。
そのため、毎年110万円の範囲内で贈与をしているつもりでも、これが定期贈与とみなされて贈与税が課税されてしまう危険性があります。

定期贈与とみなされないようにするために、贈与契約書は毎年その都度作成するようにし、贈与額や贈与時期は毎年できるだけ変えるようにすることをおすすめします。

3.生前贈与は早い方がいい?

上記のとおり、生前贈与は相続開始前3年間の間にしてもあまり意味がありません。
また、贈与をする人が高齢になると、判断能力の低下で贈与契約自体が締結できなくなるおそれもあります。
さらに、今後の税制改正で生前贈与による相続税対策が認められなくなる可能性もないとは言えません。

以上から、生前贈与はできるだけ早いうちからスタートさせた方が良いでしょう。

 

当事務所では、生前贈与に関する相談はもちろん、贈与契約書の作成や不動産の名義変更の登記(贈与登記)、提携税理士を交えての相続税・贈与税対策などを行っています。

生前贈与をしようかどうか迷っている方、贈与契約書の作り方が分からないという方など、お気軽にご相談ください。

 

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