遺言書がない場合における相続登記の必要書類

相続登記の義務化が決定し、相続登記をしなければならない人の数は今後増えてくるかと思います。
相続登記の難しいところは、個々の相続の内容によって、相続登記に必要な添付書類が少しずつ変わってくるところです。


特に遺言書があるかどうかによって相続登記に必要な書類は大きく変わってきます。

ここでは、被相続人が遺言書を遺していない場合の相続登記の必要書類について詳しく解説します。

1.遺言書がない場合の相続

遺言書がない場合の不動産の相続の仕方としては、①法定相続分どおりに相続するか、②遺産分割をして一部の相続人が相続することになります。

1-1.法定相続分どおりに不動産を相続する

法定相続分とは、民法第900条によって定められた相続分です。
この法定相続分どおりに相続をする場合には遺産分割をする必要がないため、相続人間で遺産分割の話し合いがまとまらないときであっても、相続登記が可能です。

また、法定相続分どおりに相続登記をする場合には、相続人の一人から相続登記の申請をすることも可能ですので、他の相続人が相続登記に協力しない場合であっても、相続人全員の名義に相続登記をすることができます。
ただし、相続登記の申請人とならなかった相続人については、登記完了後に登記識別情報通知が発行されませんので、相続人の一人からの相続登記の申請はあまりおすすめできません。

1-2.遺産分割をして一部の相続人が相続する

法定相続分どおりではなく、相続人の一部に不動産を相続させたい場合には、相続人全員で遺産分割をします。

遺産分割は必ず相続人全員が揃って行う必要があり、相続人の一部を除いて遺産分割をしたり、後から相続人漏れが発覚した場合には、遺産分割は無効となってしまいます。
なお、相続放棄をした相続人がいる場合には、その者は初めから相続人でなかったことになるため、遺産分割協議に加える必要はありません。

1-3.代襲相続が発生している場合

代襲相続とは、本来相続人となるはずだった人が被相続人の死亡以前に死亡していたり(同時死亡を含む)、相続欠格や相続人の廃除によって相続権を失っていた場合に、その人の子が代わって相続人となることをいいます。

代襲相続が発生している場合の相続の方法は基本的には変わりませんが、代襲相続人(本来の相続人に代わって相続人になる人)となる子が複数いる場合には、その全員が法定相続人となるため、相続関係者は増えることになります(他の相続人の相続分に影響はありません。)。

2.基本的な相続登記の必要書類

遺言書がない場合に相続登記で必要となる基本的な書類は次のとおりです。

〇相続登記申請書

〇被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍、改製原戸籍)

〇相続人が被相続人の兄弟姉妹である場合には、被相続人の父母について出生から死亡までの連続した戸籍(除籍、改製原戸籍)

〇相続人全員の現在の戸籍(被相続人の死亡後に取得したもの)

被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の除附票

〇不動産を取得する相続人の住民票

〇固定資産税納税通知書もしくは固定資産評価証明書

相続人が一人しかいない場合であったり、法定相続分どおりに相続をする場合には、基本的にはこれらの書類だけで済むことが多いです。

固定資産税納税通知書、固定資産評価証明書は相続登記をする不動産の評価額を知るためのものですが、法務局によって取り扱いが異なっており、原本ではなくコピーの提出で済むところもあれば、コピーすら必要ない法務局も存在します(法務局の方で不動産の評価額を確認できる場合)。
もっとも、相続登記の登録免許税の金額は固定資産税納税通知書や固定資産評価証明書に記載されている評価額を基に自分で計算をすることになるため、不動産の評価額が記載された書類は用意する必要があります。
なお、地域によっては、固定資産評価通知書といった登記手続きでのみで使用するものを無料で発行してくれるところもあったりします。

また、平成29年5月から開始された法定相続情報証明制度によって取得した法定相続情報一覧図の写しを添付すれば、被相続人と相続人の戸籍や住民票の添付が不要となります。

3.相続の内容によって別途必要となる書類

相続登記の基本的な必要書類は上記に記載したとおりですが、それ意外にも書類が必要となる場合があります。

3-1.遺産分割によって相続人の一部が不動産を取得する場合

相続人間で遺産分割をして、一部の相続人が不動産を相続することとなった場合には、その遺産分割協議書が添付書類となります。

また、遺産分割協議書には相続人全員が実印で押印しなければならないため、その実印に対応する相続人全員の印鑑証明書も併せて添付書類となります。
なお、遺産分割協議書と併せて提出する印鑑証明書には特に期限がないため、古いものであっても構いません。

3-2.相続人となる人が既に死亡していた場合

本来相続人となるべき人が被相続人の死亡以前に死亡し、代襲相続が発生している場合、その人の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍、改製原戸籍)が必要となります。

3-3.相続人の一部が相続放棄をした場合

相続人の一部が相続放棄をした場合には、相続放棄があったことが分かる相続放棄申述受理通知書もしくは相続放棄申述受理証明書を添付する必要があります。

以前は相続登記の添付書類として相続放棄申述受理通知書は使えませんでしたが、平成27年に取り扱いが変わり、現在では相続放棄申述受理通知書と相続放棄申述受理証明書のいずれも相続登記の添付書類として使用できるようになりました。

3-4.相続欠格や推定相続人の廃除によって相続人とならない者がいる場合

相続欠格とは、被相続人に対して刑事犯罪を犯すなどして、法律上当然に相続人ではなくなることをいいます。
相続欠格に該当する者がいる場合には、その本人に相続欠格証明書を作成してもらい実印を押印した上で、印鑑証明書と併せて添付する必要があります。
相続欠格事由に該当するか否かで争いがあり、裁判になった場合、相続欠格事由に該当するとされた判決の謄本と確定証明書が添付書類となります。

また、推定相続人(将来相続が発生した際に相続人となる人)の廃除とは、被相続人に対して虐待などをした推定相続人の相続権を、被相続人の意思に基づいてはく奪する制度をいいます。
推定相続人の廃除があった場合には、相続権を失った相続人の戸籍にその旨が記載されるため、推定相続人廃除の記載がある戸籍謄本が添付書類となります。

3-5.被相続人の住所がつながらない場合

被相続人の死亡時の住所が登記上の住所と異なっており、被相続人の住民票の除票だけでは住所のつながりが分からない場合があります。
この場合には、被相続人が登記上の所有者本人であることを裏付けるために、不動産の権利証(登記識別情報通知)や固定資産税納税通知書、相続人の上申書などの書類が別途必要になることがあります。

また、被相続人の住民票の除票や戸籍の附票の除票が役所での保存期間経過によって取得できなくなっているということもあります。
この場合にも同様に、不動産の権利証等の書類を別途添付することになります。

3-6.相続関係説明図を添付して戸籍の還付を受ける場合

相続登記には被相続人と相続人の戸籍を添付しますが、登記申請の際に還付手続きをしないと登記完了後に戸籍を返却してもらうことはできません。
戸籍は相続登記以外にも相続税の申告や銀行での口座の名義変更・解約など各種相続手続きで使用するため、1セットの戸籍を使いまわす場合には原本を返却してもらう必要があります。

相続登記の申請の際に戸籍のコピーを原本と一緒に添付すれば、登記完了後に原本を返却してもらえますが、コピーの代わりに相続関係説明図を提出することでも原本還付が可能です。
戸籍のコピーをすべて取るのは大変だという場合には、相続関係説明図が非常に役に立ちます。

→相続関係説明図の作成についてはこちら

4.相続登記の必要書類の収集は司法書士に任せるべきか

上記では一般的な相続登記における必要書類について記載してきましたが、案件によっては相続人の上申書が必要になったり、不動産の権利証が必要になったりと、別途必要な書類が発生してくることもあります。
少しでも特殊な事情がある場合には、相続登記の必要書類については、念のため司法書士に相談した方が安心できるでしょう。

また、基本的な相続案件の場合であっても、戸籍の解読が苦手だったり、役所での手続きが苦手という方は、司法書士にサポートしてもらいながら進めていった方がスムーズに必要書類の収集ができるかと思います。

当事務所では、相続登記の必要書類の収集はもちろん、その後の相続登記の申請まで一連の手続きをサポートしております。
相続登記手続きに不安を感じている方は、お気軽にご相談ください。

 

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