相続した不動産を売却するべきか

相続財産に不動産があった場合、その不動産を相続人が維持・管理していくか、もしくは売却してしまうか迷う方は多くいらっしゃいます。

一概にどちらが良いとは言えませんが、相続した不動産を売却せずに相続人が引き継いでいく場合も、第三者に売却して現金化する場合も、それぞれメリット・デメリットが存在します。

そのため、個々の事情に合わせてメリットとデメリットをしっかり考えた上で、売却した方がいいのか、売却しない方がいいのかを判断することが重要です。

特に不動産は上場株式や投資信託のように再度同じものを購入することは困難ですので、安易に売却してしまって後悔しないよう注意しましょう。

ここでは、不動産を売却した方がよい場合と売却しない方がよい場合に分けて、それぞれ解説していきますので、自宅などの不動産を相続された方は参考にしてみてください。

1.相続した不動産を売却した方がよい場合

相続した不動産を売却した方がよいのは、以下のような場合です。

◎不動産を売却しないと相続税の支払いが困難である場合

相続税は、相続の開始があったことを知った日から10ヵ月という期間内に申告・納付をしなければなりません。しかし、相続財産として現金・預貯金などの流動資産が少なく、相続税を支払えるだけの金額がない場合、各相続人の自己資金から支出することになります。

相続人が相続税を支払えるだけの資金を有していればよいですが、相続税は税率が高く、税額も高額になることが多いです。特に不動産は高額なものが多いため、相続財産として不動産が複数あるだけで相続税額が数百万円にのぼることも珍しくありません。

相続税を支払う資金が足りず、他に納税資金を確保する手段がない場合には、相続不動産を売却せざるを得ません。このような場合には売却によるデメリットを考える余裕はないため(相続税の申告・納付期限内に売却を済ませる必要があります。)、早急に不動産売却の手続きを進めるようにしましょう。

◎相続人間の仲があまり良くなく、将来的に揉める可能性がある場合

相続不動産は、現金や預貯金のように容易に分割できるものではないため、相続人間の争いの一因となり得ます。

また、相続財産として不動産に比べて現金・預貯金が少ない場合、不動産を取得する相続人とそれ以外の相続人とで不公平が生じます。この不公平を避けるために代償分割(不動産を取得した相続人が他の相続人に対して不動産の代わりに代償金というお金を支払う方法による遺産分割)がされることがありますが、不動産を取得した相続人が代償金の支払いを怠ったり、代償金の金額で揉めたりといったトラブルもあります。

仲が良くない相続人間で相続不動産を共有するというのは絶対に避けるべきです。

相続人間の仲があまり良くない場合には、相続不動産は早めに現金化してしまって、現金で分ける方がリスクが減ります。

争続を避けるというメリットを優先しましょう。

◎相続不動産の維持・管理が難しい場合

被相続人の自宅などの不動産は、相続開始時には老朽化が進んでいることが多いです。

そのため、定期的に自宅の清掃や修繕などをする必要がありますが、相続人が遠方に住んでいたり、病気になっていたりで、自宅に戻ることが難しい場合もあります。

空き家のまま放置しておくと、建物の倒壊や火災などの危険があり、また、固定資産税・都市計画税も発生し続けるため、デメリットが大きいです。

自宅や別荘地など、相続人が維持・管理していくことが難しい相続不動産については売却してしまうことをおすすめします。

2.相続した不動産を売却しない方がよい場合

逆に、以下のような場合には、無理をして売却する必要はないかと思います。

◎相続不動産に親族が住み続ける場合

被相続人の自宅などの不動産に引き続き親族などが住む場合には、不動産の維持・管理も適切になされるでしょうから、売却をする必要はありません。

◎配偶者居住権が設定されている場合

配偶者居住権とは、夫婦の一方が亡くなった場合、亡くなった人が所有していた自宅建物に、残された配偶者が無償で住み続けることができる権利です。

配偶者居住権が設定されている不動産であっても売却することができないわけではないですが、このような不動産は通常買い手が付かないため、売却をすることは事実上困難といえます。

不動産買取業者など買い手が見つかったとしても、売却価格がかなり低くなってしまうでしょうから、あまりおすすめはできません。

また、第三者に不動産を売却してしまうと、自宅に居住している配偶者と第三者との間でトラブルが生じる可能性があるというデメリットも考えなければなりません。

◎買い手が付かないような不動産を相続した場合

原野商法で買わされた土地や地方の山林など、不動産として全く価値がないようなものは多数存在しています。

不動産買取業者も買いたがらないような物件は売却自体難しいため、無償で貰い受けてくれる人が出てくるのを待つしかありません。

幸いこのような土地は固定資産税・都市計画税もほとんどかからないでしょうから、売却せずに放置していても大きなデメリットはありません。

ここ最近、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(相続土地国庫帰属法)が新しく制定され、相続した土地の所有権放棄が認められるようになりますが、要件が厳しく、メリットよりもデメリットの方が大きくなりかねないものなので、あまり現実的とは言えません。

3.個別の事情を勘案して判断すべき場合

以下の場合には一概にどちらがよいとは言えないため、それ以外の様々な事情も総合考慮した上で、相続人間でしっかりと話し合う必要があります。

◎相続不動産が代々受け継がれてきた由緒あるものである場合

先祖代々受け継がれてきた土地などは、被相続人としても売却して欲しくないという思いがある場合があります。遺言書で売却しないよう記載されていることもあります。

しかし、被相続人が相続不動産の売却を禁止することまではできないため、相続人が相続不動産を売却するか否かは自由です。

相続人間でもこのような相続不動産を売却すべきか否かについて意見が分かれることがあるでしょうから、それぞれの場合のメリット・デメリットを列挙した上で、しっかりと話し合って決めることが重要です。

相続した不動産を売却すべきか否かは、様々な事情を考慮して決めなければなりません。

当事務所では不動産会社とも提携しておりますので、相続不動産の売却に関するあらゆる相談に対応することができます。

自分たちだけでは決められないという方は、お気軽にご相談ください。

 

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