相続法改正のポイント-遺産分割の取り扱いについて

近年の民法(相続法)の改正により、遺産分割の取り扱いが変更されました。

以下では、法改正によって遺産分割のどのような点が変更されたのか、具体的にご紹介していきます。

1.遺産の「一部分割」が明文化

従来の民法では、遺産の「一部分割」ができるかどうかは条文上明らかになっていませんでした。

遺産の一部分割とは、遺産の全部ではなく一部のみを分割することを意味します。

例えば、相続財産に不動産と株式、預貯金がある場合において、預貯金だけ先に遺産分割をして相続する人を決定してしまうというものです。

確かに従来も、実務上は一部分割が行われることはよくありました。

例えば、相続財産のうち不動産だけとりあえず先に遺産分割をし、代表の相続人名義に相続登記をした後第三者に売却する、というようなことがよく行われていました。

条文上は規定がないものの、共同相続人全員が納得すれば、問題なく一部分割をすることも可能であると考えられていたのです。

一方で、相続人同士での遺産分割協議がまとまらず、家庭裁判所に持ち込まれた場合には、遺産分割については「全部分割が原則」とされ、一部分割は例外的な措置とされていました。

家庭裁判所での遺産分割において一部分割が認められるのは、以下のような事情がある場合のみとされていたのです。

  • 一部分割によって早期に紛争解決が見込めること
  • 一部の遺産の範囲や評価方法に争いがあり、審理に相当の時間がかかってしまうので、一部分割に合理性があり、一部分割によって遺産全体の適正な分割が不可能にならないこと

今回の法改正により、明文で一部分割が認められることが規定されたので、家庭裁判所において遺産分割が行われる場合にも一部分割が認められやすくなると考えられます。

2.相続人の一部が勝手に相続財産を処分した場合の救済措置

相続人の一部が遺産分割をする前に勝手に相続財産を処分してしまうケースがまれに存在します。例えば、被相続人の預貯金口座のキャッシュカードを管理している相続人が、口座凍結前にそのカードを使って勝手に預貯金を引き出して使ってしまうケースなどです。

被相続人名義の預貯金が勝手に引き出されて使われてしまった場合には、その分は相続財産ではなくなってしまいます。従来このような相続人に対しては、他の相続人は不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求などで回収するしかありませんでした。

しかし、法改正によって、他の相続人全員の同意があれば、勝手に処分された財産も相続財産とみなして遺産分割の対象とすることができるようになりました(民法第906条の2)。これによって、従来不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求で回収するしかなかった部分について、遺産分割の中で解決することができるようになったのです。例えば、相続人の一人が勝手に引き出した預貯金についてはその相続人に取得させるという内容の遺産分割にすれば、他の相続人は不動産などの他の相続財産を優先的に取得することができるでしょう。

もっとも、このような場合には通常家庭裁判所での審判や調停での遺産分割となるでしょうから、裁判手続きを利用するという点では手間がかかりますが、不当利得返還請求訴訟や不法行為に基づく損害賠償請求訴訟といった民事訴訟を別途提起する手間が省けるという点では、メリットがあるかと思います。

いずれにしても、専門家の関与なしでは対応が難しい問題ですので、早めに専門家に相談するようにしてください。

遺産分割についてのご相談はお気軽に

遺産分割の取り扱いについての改正民法(相続法)はすでに施行されているので、これから遺産分割を進めるときには改正内容を知っておく必要があります。

法律の専門家である司法書士のアドバイスを受けておけば安心ですので、お気軽にご相談ください。

 

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