成年後見制度のメリット・デメリット

成年後見制度の利用者は年々増加傾向にあります。

これは、高齢者の方が増加していることもありますが、成年後見制度が一般に広く認知されるようになり、その必要性・重要性が理解されるようになってきたとも言えます。

しかし、成年後見制度を利用するにあたっては、注意点やデメリットも多く存在します。

以下では、成年後見制度のメリットやデメリット、成年後見制度を利用しないことで起こりうるトラブルについて解説します。

1.成年後見制度を利用する場合のメリット

1-1.不当な契約や詐欺から本人を守ることができる

成年後見が開始された場合、今後は法定代理人である成年後見人が本人に代わって契約の締結などを行っていくことになります。

そして、成年後見開始後に本人が勝手に契約を締結しても、成年後見人はこれを取り消すことができるようになります(日用品の購入など日常生活における小さな契約は取り消すことができません。)。

そのため、判断能力が低下している本人が悪徳商法や詐欺によって不当な契約をさせられてしまったり、また、正当な契約であっても、本人に不利益が生じ得るものであれば、成年後見人が契約を取り消して本人の財産を保護することができるのです。

このことは、本人にとっても家族にとっても大きなメリットと言えるでしょう。

1-2.家族による財産の勝手な使い込みを防止することができる

認知症などで判断能力が低下してくると、家族が代わりに通帳などを管理したりすることは多いかと思います。

しかし、通帳などを管理している家族が、日常の生活費を超えて本人の財産を使い込んでしまうというケースが後を絶ちません。

また、本人の判断能力が低下しているのをいいことに、本人から委任状をもらって契約を締結し、本人の財産を処分してしまうという例もあります。

成年後見人が付いていれば、通帳などを含む本人の財産はすべて成年後見人の方で管理をすることになるため、家族に使い込まれる心配はなく、また、勝手に締結された財産処分の契約は取り消すことができます。

1-3.契約など各種手続きがスムーズに進む

本人の判断能力が低下していると、契約を締結するにもその内容を理解するのに時間がかかったり、相手方もそのような状態の人と契約を締結するのには抵抗があるでしょうから、なかなか手続きが先に進まないことがあります。

成年後見人が付いていれば、契約などの手続きはすべて成年後見人が行うので、各種手続きをスムーズに進めることができます。

1-4.裁判所が監督をしてくれる

成年後見人が本人の財産を管理・処分するといっても、好き勝手できるわけではありません。

成年後見人は家庭裁判所や後見監督人の指導・監督のもとに後見業務を行っていくため、本人としては安心して財産を預けられるというメリットがあります。

2.成年後見制度を利用する場合のデメリット

2-1.一旦後見が開始してしまうと基本的にやめることはできない

後見開始の審判を申し立ててそれが家庭裁判所に認められると、やっぱりやめたい、ということはできません。

後見が終了するのは本人が死亡した時か、本人の判断能力が回復して後見開始の審判が取り消された時です。本人の判断能力が回復することは滅多にないため、実質本人が死亡するまで後見が続くことになります。

また、成年後見人として就任した人は、やむを得ない事情がない限り成年後見人を辞任することができません。特に親族が成年後見人に就任した場合には、辞任できないというデメリットは大きいと思います。

2-2.見ず知らずの人が成年後見人になる可能性がある

成年後見人には親族もなることができますが、最終的に成年後見人を誰にするかを決定するのは家庭裁判所です。

そのため、見ず知らずの人が成年後見人に就任する可能性は十分にあります。

特に、本人の財産が一定程度以上あると、親族後見人ではなく、司法書士などの専門家が後見人となるパターンがほとんどです。

専門家とはいえ、見ず知らずの人が本人の通帳や不動産の権利証などを持って行ってしまうのには抵抗がある方も多いでしょう。

2-3.費用が発生する

成年後見制度を利用する場合には、まず申し立ての段階で印紙代や切手代、診断書作成費用などの費用が発生します。

また、専門家が成年後見人に就任した場合には、本人の財産の種類・額に応じて月に2万円~5万円程の費用がかかります。これは後見業務が終了するまで続くため、本人が10年、20年と長生きした場合には、数百万円の費用が発生することになります。

2-4.自由な財産処分や相続対策ができなくなる

成年後見人が付くと、本人の財産は基本的に成年後見人の方で管理してくことになるため、本人は自由に財産を使うことができなくなります。

日用品を購入する程度の出費は可能ですが、例えば、好きな車を購入したり、絵画を購入したりといったことはできなくなります。

また、成年後見人の方でも自由に本人の財産を処分できるわけではなく、家庭裁判所の許可が必要な場合もあります。

特に、相続対策として生前贈与をする、投資用の不動産を購入する、株式や投資信託を購入するといったことは一切できなくなるため、注意が必要です。

投資のような積極的な財産処分をするのであれば、成年後見制度ではなく、家族信託を利用する方が良いでしょう。ただし、家族信託は本人の判断能力がしっかりとしているうちに契約を締結しなければなりません。

2-5.申し立て自体が手間である

成年後見制度を利用するためには家庭裁判所に申し立てをしなければなりませんが、その際揃える書類が非常に多く、手間も時間もかかります。

また、申し立てをした後も、家庭裁判所とのやり取りであったり、面談、鑑定手続きと、多くの時間を奪われてしまいます。

時間があまり取れないという方や、面倒な手続きを避けたいという方は、司法書士などの専門家に手続きを任せてしまうのが良いでしょう。

3.成年後見制度を利用しないことで起こりうるトラブル

3-1.遺産分割をすることができない

遺産分割も法律行為である以上、遺産分割協議をする各相続人には判断能力が必要です。

そのため、判断能力が低下している相続人がいるにもかかわらず、成年後見制度を利用しないでいると、いつまでたっても遺産分割をすることができず、相続財産が宙に浮いたままになってしまいます。

相続税が発生する場合には、原則として10ヵ月以内に遺産分割をして申告・納税をしなければならないため、特に注意してください。

3-2.不動産を売却することができない

例えば、本人が施設に入所することになって多額の入所金が必要になった場合、自宅などの不動産を売却して資金を確保することはよくあります。

しかし、成年後見人が付いていないと、不動産を売却することができないため、施設の入所を断念せざるを得なくなる可能性があります。

3-3.不動産を賃貸に出すことができない

例えば、経営しているアパートに空室が出たため新たに賃借人を募集しようとしても、賃貸借契約の締結には判断能力が必要なため、成年後見人が付いていないと契約を締結することができず、アパートは空室のままになってしまいます。

3-4.施設に入所する際にもトラブルが

本人が介護施設などに入所することになった場合、判断能力が低下している本人に代わって家族が施設側と入所契約を締結することがよくあります。

しかし、本来入所契約を締結するのは本人であり、家族が本人の意見をしっかりと聞かずに入所契約を締結してしまうと、後々トラブルのもとになります。

実際に、本人が施設に入所した後に、入所契約を締結した家族と施設に入所させられた本人との間で裁判沙汰になるトラブルが発生したケースもあります。

このようなトラブルに発展しないようにするためにも、しっかりと成年後見人を立てて契約を締結することが重要です。

成年後見制度は便利なものではありますが、多くの問題を抱えている制度でもあります。

成年後見制度を利用すべきかどうか悩んでいる方は、成年後見に詳しい司法書士がいる当事務所までご相談ください。

 

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