生前贈与をすることができる財産は法律上特に決められてはいません。
現金や時計、不動産など目に見えるものを贈与することもできますし、債権や株式など目に見えないものを贈与することもできます。
そして、不動産を生前贈与した場合には、対抗要件を備えるために(第三者に対して自分が不動産の所有者であることを主張するために)、不動産の名義変更(贈与登記)をしなければなりません。
ここでは、不動産の生前贈与、不動産の名義変更(贈与登記)について解説します。
このページの目次
1.不動産の生前贈与
不動産を贈与するといっても、不動産は現金や時計などのように手渡しできるものではありません。
そのため、不動産を生前贈与する際は、贈与したということが分かるように目に見える形で残しておく必要があります。
不動産を生前贈与したということを目に見える形で残す方法としては、以下の二つがあります。
不動産の贈与契約書を作成する
不動産の贈与契約書は法律上作成が義務付けられているものではありませんが、贈与者(贈与する側)が一方的に翻意する(贈与を取りやめる)のを防いだり、税務署などに贈与があったことを説明する資料として、通常は作成します。
また、贈与契約書を作成しておけば、後々不動産の名義変更(贈与登記)をする際にも添付書類として使えますので、不動産を生前贈与する際は、必ず贈与契約書を作成しておくようにしましょう。
2.不動産の名義変更(贈与登記)
不動産を生前贈与したら、贈与契約書の作成に加えて不動産の名義を受贈者(贈与を受ける側)に変更しておくようにしましょう。
税務署などの役所は、基本的に不動産の登記上の名義人が所有者であると考えて手続きを行います。
そのため、生前贈与をしたにもかかわらず不動産の名義変更をしないままでいると、固定資産税・都市計画税の通知や請求は贈与者の方に来ますし、税務署も贈与の事実があったことを認めてくれない可能性があります。
【不動産の名義変更(贈与登記)の流れ】
不動産の名義変更(贈与登記)の流れは、以下のとおりです。
①贈与契約書を作成する
前述のとおり、贈与契約書を作成しなくても贈与自体は可能ですが、不動産の生前贈与の場合には贈与契約書を作成することが普通ですので、まずは、贈与契約書を作成してそれぞれが署名・押印するようにしましょう。
②必要書類を揃える
贈与登記の申請に必要な添付書類一式を揃えます。具体的には以下のものを準備します。
◎贈与契約書
◎不動産の権利証(登記識別情報通知・登記済証)
◎贈与者の印鑑証明書
◎受贈者の住民票
◎固定資産税納税通知書(課税明細書)もしくは固定資産評価証明書
③登記申請書を作成する
贈与登記の申請書は、法務省(法務局)のホームページから書式(雛形)をダウンロードすることもできますが、自分でパソコンなどを使って作成しても構いません。
④登録免許税額を計算する
贈与登記の登録免許税の税率は固定資産評価額の1000分の20となります。
固定資産評価額は、固定資産税納税通知書(課税明細書)や固定資産評価証明書に記載があります。
⑤登記申請書と添付書類一式を管轄の法務局に提出(郵送)する
管轄の法務局は不動産の所在地を管轄する法務局です。
登録免許税の納付は、登記申請書を書面で提出(郵送)する場合には、税額分の収入印紙を購入して登記申請書に貼り付けます。
⑥登記完了後に登記事項証明書(謄本)を取得
通常は1~2週間程度で登記が完了しますので、完了したら登記事項証明書(謄本)を法務局で取得して不動産の名義が変わっていることを確認しましょう。
3.生前贈与をした後の税金について
不動産の生前贈与をして名義が変わった後は、次年度から固定資産税・都市計画税の通知・請求は受贈者側に来ることになりますが、固定資産税・都市計画税の他にも、受贈者には以下の税金が課税される場合があります。
贈与税
贈与した不動産の価格(土地の場合には路線価)が110万円を超えている場合には、贈与税が発生します。
また、贈与した不動産の価格が110万円を超えていなくても、同じ年度に受贈者が受けた贈与額(贈与者を問わない)と併せて110万円を超える場合にも、贈与税がかかります。
不動産取得税
不動産を取得したことに対して課される税金です。
国税ではなく地方税なので、税務署からではなく、不動産の所在地の地方自治体(東京23区の場合には都税事務所)から納付書が送られてきます。
4.不動産の生前贈与は専門家に相談を
不動産の生前贈与は、現金の贈与のように気軽にできるものではありません。
法律・税金の知識がないと思わぬ落とし穴にはまってしまうこともあるため、専門家に相談しながら進めるようにしましょう。