被相続人の住所がつながらない場合の相続登記

不動産の所有者が死亡して相続登記をしなければならない場合、その不動産の登記名義人になっている人と被相続人とが同一人物であることが分かる書類を添付する必要があります。

通常は被相続人の住民票の除票を添付すれば、そこに記載されている住所・氏名と登記上の住所・氏名が一致していることをもって同一人物であると判断することができます。

住民票の「除票」とは、住民票に記載された人が死亡や転出によって消除された場合の住民票のことをいいます。

被相続人が死亡してから長年経過しているために住民票の除票が取得できなかったり、被相続人が登記上の住所から何回も引っ越しをしているため、住民票の除票だけでは住所のつながりがとれず、同一人物であることが確認できないということもよくあります。
このような場合であっても相続登記ができなくなるわけではなく、代わりの書類を添付することで相続登記を申請することができます。

ここでは、被相続人の住所がつながらない場合であったり、被相続人の住民票の除票が取得できない場合における相続登記の仕方について解説します。

1.被相続人の住所がつながらない場合とは?

例えば、相続不動産の登記上の所有者が「東京都杉並区久我山○丁目○番○号 甲野太郎」となっており、被相続人「甲野太郎」の死亡時の住所(住民票上の住所)が「東京都三鷹市上連雀○丁目○番○号」であった場合で考えてみましょう。

この場合、被相続人甲野太郎が東京都杉並区久我山の住所から引っ越しをしたのが1度だけであれば、東京都三鷹市で取得する住民票の除票に前住所として登記上の住所が載ってくるため、登記上の所有者の住所と被相続人の死亡時の住所とのつながりがとれ、両者が同一人物であることが確認できます。

しかし、甲野太郎が東京都杉並区久我山から「東京都杉並区浜田山○丁目○番○号」に住所を移し、そこからさらに現在の東京都三鷹市に住所を移していた場合、東京都三鷹市で取得した住民票の除票には前住所として東京都杉並区浜田山の住所が載ってくるだけで、登記上の住所である東京都杉並区久我山の住所は載ってきません。
そうすると、登記上の所有者の住所と被相続人の死亡時の住所がつながらないということになり、別途書類を用意する必要性が生じます。

2.被相続人の住所がつながらない場合に別途用意する書類

被相続人の死亡時の住所地で取得した住民票の除票だけでは住所のつながりがとれない場合、以下の書類を追加で添付して相続登記を申請することになります。

2-1.前の住所地における住民票の除票

上記の例で、東京都杉並区浜田山の住所から東京都三鷹市の住所に移転した後に、東京都杉並区の方でも転出による住民票の除票(「東京都杉並区浜田山○丁目○番○号」のもの)を取得できる場合があります。
そこには前住所として東京都杉並区久我山の住所が記載されていますので、その住民票の除票と東京都三鷹市で取得した住民票の除票を合わせれば、登記上の住所から死亡時の住所までのつながりを証明することができます。

2-2.戸籍の附票の除票

住所のつながりを証明する書類として、住民票の他に「戸籍の附票」というものも存在します。
戸籍の附票は、その戸籍に在籍している期間の住所の履歴がすべて載っている書類です。
そして、死亡や転籍によって除籍された場合のものを、戸籍の附票の除票(戸籍の除附票)といいます。

例えば上記の事例で、甲野太郎の本籍が「東京都杉並区久我山○丁目○番」のまま死亡時まで変更なかった場合、東京都杉並区で戸籍の附票の除票を取得すれば、そこに「東京都杉並区久我山○丁目○番○号」から「東京都三鷹市上連雀○丁目○番○号」までの住所の履歴がすべて記載されていますので、それで住所のつながりを証明することができます。

2-3.不動産の権利証

住民票の除票や戸籍の附票の除票によって住所のつながりを証明することができない場合には、不動産の権利証を代わりに添付することができます。
なぜ不動産の権利証が代わりの書類になるかというと、不動産の所有者以外は通常持ち得ない権利証を持っていることで、不動産の所有者(登記名義人)であると推定されるからです。

権利証は登記がコンピュータ化される前の冊子タイプの「登記済権利証」とコンピュータ化後の「登記識別情報通知」のいずれであっても、代わりの書類として添付することができます。

なお、登記識別情報通知を添付する際には開封する(シールを剥がす)必要はありません(中身の識別情報が必要な訳ではないため)。

2-4.固定資産税納税通知書

固定資産税の納税通知書は、毎年不動産の所有者宛てに送られてくるので、納税通知書を持っていることで不動産の所有者であることが推定されます。

しかし、不動産の権利証と比べるとその推定力は弱いため、固定資産税納税通知書が代わりの添付書類になるか否かは、管轄の法務局によって判断が異なるようです。

2-5.相続人の上申書+印鑑証明書

上申書とは、被相続人が登記上の所有者であることに間違いないという旨を書面にしたものをいいます。
上申書には相続人の実印を押印し、印鑑証明書を併せて添付します。

この上申書が代わりの書類になるか否かも管轄の法務局の判断によりますので、必ず事前に法務局に相談するようにしてください。

また、誰の上申書が必要になるかについても、最終的には管轄の法務局の判断になります。
通常は相続人全員の分を添付しますが、非協力的な相続人がいる場合などには、一部の相続人のみ添付すれば構わないということもあります。

2-6.不在籍・不在住証明書

不在籍・不在住証明書とは、指定した住所(本籍)に住民登録をしている(本籍を置いている)○○という名前の人物は存在しないといったことを役所が証明するものです。
不在籍証明書と不在住証明書を合わせたものを不在籍・不在住証明書と言ったりします。

上記の事例で説明すると、「東京都杉並区久我山○丁目○番○号」に住民登録をしている(本籍を置いている)甲野太郎という人物は存在しないということを証明してもらうことになります。
「東京都杉並区久我山○丁目○番○号」に現在住民登録をしている(本籍を置いている)甲野太郎という人物はいないのだから、「東京都三鷹市上連雀○丁目○番○号」に住んでいた被相続人である甲野太郎が登記上の甲野太郎であると考えても矛盾はないだろうという消極的な推定が働くことになります。

あくまで消極的な推定でしかないため、最近は不在籍・不在住証明書を添付することは少なくなっていますが、案件によっては法務局から提出を要求されるケースもあります。

3.住民票の除票や戸籍の附票の除票を取得できないときはどうする?

住民票の除票と戸籍の附票の除票には、役所での保存期間というものがあり、保存期間を経過すると役所の方で破棄されてしまいます。
令和元年6月20日に住民基本台帳法施行令が改正される前は、住民票の除票・戸籍の附票の除票のいずれも保存期間は5年間とされていたため、5年を経過して破棄されてしまっているものについては取得することができません。

この場合には、不動産の権利証があればそれを添付し、権利証がなければ、管轄の法務局に相談の上、固定資産税納税通知書であったり、上申書などの書類を添付することになります。

4.まとめ

被相続人の住所がつながらない場合に添付する可能性がある書類をまとめると、次のようになります。

〇前住所地の住所の除票

〇戸籍の附票の除票

〇不動産の登記済権利証(登記識別情報通知)

〇固定資産税納税通知書

〇上申書+印鑑証明書

〇不在籍・不在住証明書

被相続人の住所がつながらない場合の相続登記は、通常の相続登記と比べて添付書類も増えるため、難易度が上がります。

難しくてよく分からないという方は、司法書士までご相談ください。

 

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