知っておくべき遺言書の種類

一般的に遺言書と言えば、高齢者の方が自分で紙に書いて押印し、封筒などに入れて保管しておくというイメージがありますが、実は遺言には様々な形式によるものが存在し、それぞれ要件も異なっています。

遺言の種類としては以下のようなものが存在します。

  • 普通方式によるもの
    …自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言
  • 特別方式によるもの
    …一般危急時遺言、難船危急時遺言、一般隔絶地遺言、船舶隔絶地遺言

これらのうち、一般的に使われている方法が自筆証書遺言と公正証書遺言です。

特別方式による遺言書は、病気や事故などにより死が間近に迫っている場合であったり、伝染病(感染症)による隔離措置や航海中の船の中など、外と隔絶された状況にある場合に作成するものです。

新型コロナウイルス感染症にかかってしまった方は、特別方式による一般隔絶地遺言などを利用することも考えられます。

今回は、遺言書の中でも普通方式によるもの(自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言)について、それぞれの特徴などを解説します。

1.自筆証書遺言

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者自身が遺言の内容の全文(財産目録を除く)、日付及び氏名を自書し、押印して作成する方法による遺言です。

自筆証書遺言の特徴は、作成したいときに自分だけで作成することができ、作成の費用を抑えることができます。しかし、せっかく書いた遺言書が形式上の不備で無効になってしまったり、紛失・改ざんなどのリスクがあります。また、相続開始後に遺言書を家庭裁判所に提出して検認手続き(※)を受けなければなりません。

なお、自筆証書遺言のデメリットについては、法改正によって新設された法務局での自筆証書遺言保管制度を利用することによって、ある程度解決することができます(→法務局における自筆証書遺言保管制度についてはこちら)。

※検認とは、相続人に対して遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

2.公正証書遺言

公正証書遺言は、遺言者がこういう内容の遺言書にしたいという希望を公証人(※)に伝え、公証人が遺言書の案文を作成し、遺言者に読み聞かせる方法による遺言です。

自筆証書遺言の欠点であった形式上の不備による無効のリスクを排除でき、遺言書の原本を公証役場で保管するため、紛失や改ざんなども防ぐことができます。

また、手続きに時間がかかる家庭裁判所の検認が不要となるため、相続開始後の手続きが非常にスムーズに進みます。

ただし、作成にあたって公証人と内容の打ち合わせをしたり、証人を2人以上用意しなければならないなど、作成自体に手間と時間がかかり、また、公証人に手数料を支払わなければならないため、費用がかさみます。

※公証人とは、判事や検事などを長く務めた法律実務の経験豊かな者の中から、法務大臣が任命する公務員であり、遺言や各種契約についての公正証書の作成、会社の定款認証などの公証事務を行っています。

3.秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言者がパソコンなどで作成した遺言書に署名・押印し、封書に入れたものを公証人と証人2人以上の前に提出して作成する遺言方式で、遺言書の中身を秘密にできることから、秘密証書遺言と呼ばれています。

遺言の内容を自書する必要はなく、パソコンなどで作成することができるため筆記の手間を省くことができ、また、公正証書遺言よりは手数料を抑えられます。

しかし、公証人に提出するといっても、公証人のチェックがあるわけではなく、公証役場で遺言書を保管してくれるわけでもないため、形式上の不備による無効のリスクや紛失・隠匿のリスクはありますし、証人を用意したり、相続開始後に検認手続きが必要であるなど、手間もかかります。

このように中途半端な方式の遺言であるため、実務上はほとんど使われていません。

それぞれの遺言について詳しく知りたいという方や、自分にはどの方式の遺言が合っているのかアドバイスが欲しいという方は、遺言書の作成に数多くの実績がある当事務所までご相談ください。

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