相続法改正のポイント-相続人以外の親族の貢献が「特別寄与料」に

近年の民法(相続法)の改正により、「相続人以外の人」が介護や労務提供によって被相続人の財産形成に貢献した場合、「特別寄与料」というお金を受け取れる制度が新設されました。

今回は、具体的にどのようなケースでどういった人が特別寄与料を受け取れるのか、わかりやすく解説します。

1.特別寄与者、特別寄与料とは

民法改正によって新設された「特別寄与」とはどういった制度なのでしょうか。

これは、一定範囲の親族が被相続人を介護したり事業を手伝ったりして、被相続人の財産の維持・形成に貢献したとき、その親族が相続人でなくても、「特別寄与料」というお金を相続人に対して請求することができる制度です。

従来でも、被相続人を介護したり、被相続人の事業を手伝ったり金銭的な援助をしたりすると、「寄与分」として多めに相続財産を受け取ることができるという制度がありました。しかし、寄与分が認められるのは相続人だけであり、相続人以外の親族が介護などを行っても、相続財産を受け取ることはできないという問題がありました。それでは献身的に介護を行った長男の嫁や甥・姪などの親族が報われません。

そこで、今回の法改正で、相続人以外の親族であっても、寄与に応じた額の「特別寄与料」という金銭を受け取ることができる制度が新設されたのです。

特別寄与料の対象となる行為

親族が特別寄与料を受け取るためには、以下のような行為をしたことにより、被相続人の財産の維持又は増加に寄与したと認められることが必要です。

  • 被相続人に対して無償で療養看護(介護など)を行った
  • 被相続人に対して無償で労務の提供(事業を手伝う等)をした

なお、親族が被相続人の精神的な支えとなっただけでは特別寄与料を請求することはできません。また、被相続人に生活費を送るなど財産的な援助をした場合や、被相続人の財産管理のみをしていたという場合も、特別寄与料の請求が認められない可能性が高いため注意が必要です。被相続人から対価をもらっていた場合にも、特別寄与料の請求が難しくなります。

相続人以外の親族の特別寄与料は、相続人に認められる寄与分よりも範囲が狭くなっているといえるでしょう。

2.特別寄与料を請求することができる人の範囲

特別寄与料を請求することができるのは、一定範囲の親族に限られます。

親族といっても、一般的に使われている用語としての親族ではなく、民法上の親族に(民法第725条)なります。

民法上の親族は、

  1. 6親等内の血族
  2. 配偶者
  3. 3親等内の姻族

ですが、特別寄与料を請求することができるのは相続人以外の親族ですので、常に相続人となる配偶者についてはここから除かれます。なお、配偶者が相続放棄をして相続人ではなくなった場合であっても、特別寄与料の請求権者とはなりません。

① 6親等内の血族は、具体的には
父母、祖父母、曽祖父母、子、孫、ひ孫、兄弟姉妹、叔父叔母、甥姪、いとこやはとこなどの直接の血縁のある親族です。

③ 3親等内の姻族は、具体的には
配偶者の父母や祖父母、配偶者の兄弟姉妹、配偶者の甥姪などです。

親族ではない第三者には特別寄与料は認められません。

3.特別寄与料の請求方法

特別の寄与をした親族が特別寄与料を請求するためは、「相続開始後」に、「相続人に対して」金銭の支払いを請求することになります。このとき、相続人間の遺産分割協議に参加する必要はありませんし、そもそも相続人ではないため参加することはできません。

相続人が複数いる場合は、各相続人の法定相続分に応じた金額をそれぞれに請求することになります。

特別寄与料を支払うべきか否か、支払うとしてもいくら支払うかなど、相続人との話し合いがまとまらない場合も多いかと思います。

その場合、特別寄与者は家庭裁判所に調停や審判の申し立てを行うことができます。

特別寄与料請求の期間制限

相続人に対して直接特別寄与料を請求する場合には、特に期限は設けられていませんが、家庭裁判所に対して特別寄与料を求める調停や審判の申し立てを行う場合には、

「特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月以内」に手続きしなければなりません。

また、相続の開始や相続人を知らなくても、「相続開始の時から1年」が経過すると、家庭裁判所に対して申し立てができなくなってしまいます。

相続人でなくても、被相続人に貢献した親族の方は、特別寄与料を請求することができる可能性があります。

ご自身だけで安易に判断するのは危険ですので、専門家に相談するようにしましょう。

 

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