相続が発生すると相続税がかかることがありますが、相続財産として不動産が多い場合、相続税も高額になることが多いため、納税資金を確保しておく必要があります。
相続財産として現金・預貯金・株式などの流動資産があまりなく、相続人も自己資金が少ない場合、相続した不動産を売却して納税資金を作ることになりますが、相続した不動産を売却して資金を確保したいといっても、すぐに売却できるわけではありません。
以下では、不動産を相続してから売却するまでにかかる期間や、司法書士による不動産の売却代理について解説します。
このページの目次
1.相続不動産売却にかかる期間
相続した不動産を売却し、売却代金を取得することができるまでの期間は、相続手続きの複雑さであったり、不動産の状態、売却先の相手方等によって大きく変わってきます。
不動産売却の期間に影響を与える要素としては以下のようなものがあります。
◎相続不動産に関して相続人間で揉めているか
相続人間で誰が不動産を相続するか、相続した不動産を第三者に売却するかどうかで揉めている場合には、そもそも売却の手続きに入ることは困難です。
遺言書がない限り、相続不動産の売却には相続人全員の関与が必要となってくるからです。
スムーズな相続不動産売却のためには、遺言書をしっかりと遺しておくのがよいでしょう。
◎買主は不動産買取業者か個人か
不動産をできるだけ高く買ってもらいたいということであれば、個人などのエンドユーザーに売却する必要があります。
しかし、不動産によってはなかなか買い手が付きにくいものも存在します。中には何年も買主が決まらないといった物件もあります。
買主が不動産買取業者であれば、売却価格は低くなりますが、すぐにでも買い取ってもらえる可能性が高いです。特に、古い建物が建っている土地なんかは、古い建物ごと買い取ってもらえるため、建物取り壊しの手間が省けます。
◎不動産自体にトラブルがないか
例えば、売却する土地に関して、隣地の所有者と境界で揉めている場合には、境界を確定するまでは、売却することが困難となります(不動産買取業者であれば、そのような物件でも買い取ってくれるところもあります。)。
また、マンションの場合で隣人に問題があるなど環境的瑕疵がある物件は、買い手が付きづらく、売却までの期間が長くなることが多いです。
◎買主が住宅ローン等の借り入れを利用するか
買主側で住宅ローンなどを利用する場合には、金融機関での審査や契約手続きなどに1か月程度かかることがあります。
また、住宅ローンなどを利用する場合には、売買契約の締結と代金決済を同日に行うことはできません。
なお、不動産買取業者も不動産を購入する際に金融機関から借り入れを行う場合がありますが、個人が住宅ローンで借り入れる場合に比べて短期間で審査が通ることが多いです。
相続人間の揉め事もなく、不動産自体にも問題がない場合、不動産買取業者に買い取ってもらうのであれば、相続手続き開始から2ヵ月以内に売却をすることも不可能ではありません。
個人に対して売却をするのであれば、半年程度は見ておいた方がよいでしょう。
2.司法書士による不動産の売却代理
司法書士は依頼を受けて他人の財産を管理・処分する業務を行うことができます。
不動産の売却代理もその一つで、司法書士が不動産の相続人に代わって不動産売却手続き一切を代理します。
不動産の売却手続きは時間も手間もかかり、思っていた以上に大変だったという方が多いです。特に、仕事をしていて忙しい方や、高齢で難しいことは分からない・移動が大変という方は、不動産の売却手続きを司法書士に丸投げしてみてはいかがでしょうか。
不動産の売却代理で司法書士に任せられること
- 不動産の現況確認、不用品の処分
- 売却までの不動産の維持・管理
- 不動産会社(仲介会社・買取業者)の選定、査定依頼、媒介契約の締結
- 土地の測量、境界画定、古い建物の取り壊しなど売却の前提作業
- 不動産売買契約の締結、手付金の受領
- 決済手続き(売買代金残額の受領、不動産・鍵の引渡し)
- 名義変更(所有権移転登記)、担保権(抵当権)の抹消など
特に以下のような場合は司法書士による売却代理をおすすめします
- 仕事が忙しく、まとまった時間を取りづらい場合
→司法書士が面倒な手続きを代行しますので、仕事に専念することができます。 - 不動産についてあまり詳しくなく、自分だけで売却するのが不安な場合
→不動産、法律のプロである司法書士が売却手続きを行うため、安心して任せられます。 - 1日でも早く不動産を売却して売却代金を手に入れたい場合
→不動産業界に多数の人脈を持つ司法書士が最適な買主を探し、速やかに手続きを行います。 - 高齢や病気のため、外出するのが不可能であったり、または困難な場合
→契約や立会いなど移動が必要な手続きはすべて司法書士が代行いたします。 - 相続不動産が多数の相続人の共有となっている場合
→相続人全員からの依頼を受ければ、司法書士が単独で手続きを進めることができます。
なお、高齢や認知症などにより、判断能力が低下している場合には、不動産売却のための委任を受けることができませんので、別途成年後見人として司法書士を選任してもらう必要があります。