こんな時は家族信託-実家が空き家になり管理や売却が心配

高齢になると、病気で病院に入院をしたり、特別養護老人ホームなどの介護施設に入所したり、バリアフリーがしっかりしている高齢者用のマンションに転居したりする方が多数おられます。

さらに、最近はサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)といって、入居者の安否確認や生活相談支援などをしてくれる賃貸住宅も増えてきており、高齢者の方が終の棲家とする選択肢が広がっています。

しかし、賃貸住宅ではなく自身で所有している自宅を出るとなると、今まで住んでいた家が空き家になってしまうことはよくあります。

しかも、所有者である本人は高齢となっており、定期的に自宅に戻ってきて空き家の管理をしたり、第三者に自宅を売却したりするのは難しくなるものです。

その結果、自宅は管理する人がいない空き家のまま放置され続け、全国的に空き家が増加傾向にあるのが現状です。

「家族信託」は、このような空き家対策にも役立つ可能性があるので、活用方法をご紹介します。

1.空き家を親族が勝手に売却することはできない

自宅の所有者が入院をしたり、施設に入所したりすると、今まで住んでいた家は空き家となりますが、空き家だからといって所有者の親族などが勝手に自宅を第三者に売却することはできません。

所有者以外の人が空き家を売却するためには、入院・入所している所有者本人から委任を受ける必要があります。

しかし、空き家の所有者本人が高齢で認知症となっているなど、空き家の売却についての意思能力・判断能力が不十分な場合には、本人から委任を受けることもできないため(委任は委任契約という契約ですので、契約内容を十分に理解できるだけの判断能力が求められます。)、空き家の売却が非常に困難となります。

この場合には、本人について後見開始の申立てをし、後見人が就任した後に、後見人が裁判所の許可を得て空き家を売却することになります。

ただ、後見人に親族が就任できるとは限りませんし(東京などの都市部では司法書士などの専門家が就任することの方が多いです。)、裁判所が空き家の売却の許可を出さない可能性もあります。

いずれにしても、空き家売却の手続きに入るまでに数ヶ月かかるため、スムーズな売却とはならないことに注意が必要です。

2.家族信託を使って空き家を管理・処分する

将来、自宅が空き家になる可能性がある場合には、所有者本人が認知症になる前に家族信託を使うのがおすすめです。

家族信託は、信頼できる家族に自身の財産を託して、それを適切に管理・処分してもらうための信託契約です。

例えば、自宅の所有者を委託者(財産を預ける人)兼受益者(財産の信託によって利益を受ける人)、子を受託者(預かった財産を管理・処分・運用する人)とし、自宅の管理・処分を内容とする信託契約を締結しておけば、信託契約後に所有者本人の判断能力が低下して施設に入所することになっても、受託者となった子が自宅を賃貸に出したり、第三者に売却することも可能となります。後見人と違って裁判所の許可を得る必要もありません。

また、自宅と併せて現金・預貯金を信託財産としておけば、受託者はそのお金を使って自宅の修繕を行ったり、リフォーム工事をした上で賃貸・売却をしたりというようなことも可能です。

このように空き家の柔軟な管理・処分には、後見制度よりも家族信託の方が向いているといえます。

3.家族信託は相続(争続)対策にもなる

家族信託をしていない場合、自宅の所有者が死亡すると、相続人間で遺産分割をして自宅の帰属や管理・処分について話し合いをすることになりますが(遺言書がある場合はその遺言の内容によります。)、相続人の一人が行方不明だったり、相続人間で意見の食い違いが生じるなど、スムーズに話し合いが進まないことがあります。そうなると、自宅を売却することもできず、管理者不在のまま放置され、空き家問題へと発展します。

一方、家族信託では、自宅の所有者(委託者兼受益者)が死亡した場合でも、死亡後に委託者・受益者となるものを別に定めておけば、契約の効果は継続します。

そのため、空き家となった自宅についても受託者が引き続き管理・処分をすることができ、建物の劣化による価値の下落や倒壊の危険なども防ぐことができます。

また、信託財産となっている自宅は相続財産としては扱われないため、遺産分割協議も不要です。そのため、自宅の帰属に関して相続人間で余計な争いを生む心配もありません。

家族信託を利用することは、空き家対策、相続(争続)対策として非常に有効な手段と言えます。

家族信託に興味がある、家族信託を利用してみたいけど内容が難しそうで心配という方は、司法書士に一度ご相談ください。

 

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