遺産分割とは、相続が発生した場合に相続人間で遺産を分ける手続きのことです。
被相続人が遺言書を遺していなかった場合、被相続人が所有していた現金や不動産などの財産は、民法の法定相続分に応じて相続人間の共有状態となります。
共有状態の財産は、管理や処分に支障が出ることが多く、また、共有者間で揉めるなどトラブルに発展するリスクも高くなるため、早めに共有状態を解消した方が得策です。
この遺産共有状態を解消する手続きが遺産分割というものです。
そして、遺産分割をしたら、それを形として残すために「遺産分割協議書」を作成しなければなりません。
遺産分割協議書の作成は法律上の義務ではありませんが、口頭だけの遺産分割ですと、相続登記や相続税の申告などの相続手続きで遺産分割があったとは認めてもらえません。
また、遺産分割協議書は法律上有効になるように、正しい方法で作成しなければならず、適当に作成してしまうと法務局や税務署などで受け付けてもらえないため、注意が必要です。
今回は遺産分割協議書の書き方や提出先について専門家が解説します。
このページの目次
1.遺産分割協議書の書き方
用紙やペン、パソコンを使った作成について
遺産分割協議書には特に決まった要式はなく、用紙は白のコピー用紙のようなもので構いません。
また、パソコンで作成したものをプリントアウトしても良いですし、手書きで作成しても構いません。手書きで作成する場合には、鉛筆など消せるものは当然駄目で、ボールペンや万年筆を使用するようにしてください。最近は消せるボールペンというのも出てきていますが、絶対に使わないようにしてください。
実際の書き方
遺産分割協議書の書き方① 【冒頭に「遺産分割協議書」という書類名を書く】
書類名は遺産分割協議書だということが分かれば何でも良いですが、無難に「遺産分割協議書」としておきましょう。
遺産分割協議書の書き方② 【被相続人(亡くなった人)の情報を書く】
具体的には、被相続人の氏名や死亡日、最後の住所や本籍などを記載して、誰の財産についての遺産分割協議なのかを特定するようにします。
遺産分割協議書の書き方③ 【各遺産の分け方を書く】
遺産の種類ごとに「誰が」「何を」相続するのかを記載します。
不動産は全部事項証明書(登記簿謄本)や固定資産税納税通知書などを見ながら、所在や地番・家屋番号などを正確に記載するようにしましょう。
預貯金については、通帳やキャッシュカードを見ながら金融機関名、支店名、口座の種類(普通か定期か)、口座番号を書いてください。
遺産分割協議書の書き方④ 【相続人全員が署名・押印をする】
遺産の分け方を記載したら、最後に遺産分割が成立した日付を記入し、相続人全員が署名・押印をします。
まれにパソコンで名前まで入力し、印鑑だけ押してある「記名押印」の遺産分割協議書を見かけますが、金融機関で断られたり、一部の相続手続きで使用できなかったりする恐れもあるため、できる限り自筆で署名するようにしましょう。
なお、押印は各自実印で行い、相続人全員分の印鑑証明書を併せて取得しておきます。
遺産分割協議書の書き方⑤ 【その他の注意点】
遺産分割協議書が紙1枚に収まらずに、複数枚になってしまった場合、ページとページの間に相続人全員が契印をしましょう。枚数が多い場合には、製本テープを使って製本化をすれば、契印は1カ所で済みます。
また、遺産分割協議書は紛失した場合に備えて同じものを複数作成しておくことをお勧めします。複数作成しておけば、相続手続きを同時進行で進められたりするので、メリットもあります。
法定相続情報一覧図・遺産分割協議書・印鑑証明書のセットがあれば、基本的には相続手続きはできてしまうので、このセットを複数準備しておくと便利です。
2.遺産分割協議書の主な提出先
- 不動産の名義変更(相続登記)をするときに法務局へ提出
- 預貯金の解約・払い戻しや名義変更するときに金融機関や郵便局へ提出
- 株式の名義変更(振替え)をするときに証券会社や信託銀行へ提出
- 自動車の名義変更をするときに運輸支局や軽自動車検査協会へ提出
- 相続税の申告をするときに税務署へ提出
上記のように遺産分割協議書は各場面で必要となる重要書類です。
3.遺産分割協議書を専門家に依頼するメリット
遺産分割協議書を作成するためには、まずは相続人全員で話し合って遺産分配の仕方を合意しなければなりません。
その上で正しい方法で書面を作成し、相続人全員分の署名押印を集める必要があります。
大変手間がかかりますし、中には連絡を取りづらい相続人がいたりして、スムーズにいかないことも多いです。
専門家に依頼をすれば内容的な誤りが発生する可能性はありません。各相続人の方へ署名押印をお願いし、集めることも可能です。
遺産分割協議書の作成に関して不安がありましたら、お気軽にご相談ください。