相続法改正のポイント-遺留分侵害額請求と遺留分減殺請求について

近年の民法(相続法)の改正により、「遺留分」に関する取り扱いが変更されました。

これまでは「遺留分減殺請求」という方法で、遺留分が侵害された限度で相続財産を取り戻すというものでしたが、改正法の施行後は「遺留分侵害額請求」という金銭の支払いを請求する権利に変わりました。

今回は、遺留分侵害額請求と遺留分減殺請求との違いについて、解説します。

1.遺留分侵害額請求とは

改正法によって導入された「遺留分侵害額請求」とは、相続財産を取得した他の相続人等に対し、自身の遺留分に相当する金額を「お金」で支払えと請求するものです。

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に保障される最低限の遺産取得割合をいいます。

例えば、相続人が配偶者と子2人(長男・長女)で、遺言によって財産をすべて配偶者に相続させるとされた場合、子である長男・長女は、それぞれ自身の遺留分に相当する割合(8分の1)について、配偶者に対して請求することができます。

このとき、具体的に遺留分侵害額を請求する方法が「遺留分侵害額請求」です。遺留分を侵害された長男・長女は、配偶者に対し、遺留分侵害額を金銭で請求することができます。

上記の事例で相続財産が不動産(評価3000万円)、株式(評価1000万円)、預貯金(800万円)だったとしましょう。長男・長女の遺留分割合はそれぞれ8分の1であるところ、今回は相続財産をすべて配偶者が取得していますので、遺留分侵害額はそれぞれ(3000万円+1000万円+800万円)×1/8=600万円となります。

長男・長女は配偶者に対し、600万円を支払うよう請求することができるのです。

注意を要するのは、長男・長女は相続財産である不動産や株式を請求することはできないということです。遺留分侵害額請求はあくまで「お金」で清算ということになります。

遺留分侵害額請求を受けた配偶者側は、それぞれに600万円を支払うことになりますが、必ずしも相続財産から支出する必要はなく、自己資金があればそれで支払っても問題ありません。逆に、自己資金が全くなく、1200万円(600万円×2人分)を支払えない場合には、相続した不動産や株式を売却して資金を確保する必要があります。遺留分権利者(長男・長女)側の同意があれば、金銭の代わりに不動産や株式を譲渡することもできますが(代物弁済)、この場合には譲渡所得税が課税されることがありますので、注意してください。

2.遺留分減殺請求とは

改正前の民法でも遺留分は認められていました。ただし、その取り戻し方法が異なっていたのです。

改正前の民法において遺留分を取り戻す方法は「遺留分減殺請求」でした。

遺留分減殺請求は、遺留分に相当する金銭ではなく「遺産そのもの」を取り戻すというものです。

例えば、遺言によって不動産が相続人以外の人に遺贈されて相続人の遺留分が侵害された場合、相続人は、受遺者に対し、金銭の支払いではなく「不動産の返還」を求めることになります。

しかし、遺留分減殺請求によって相続財産を全部取り戻せるわけではないため、不動産などの場合には遺留分権利者が取り戻せるのが不動産の共有持分(不動産の4分の1など)になってしまい、遺留分を侵害した者と共有状態になってしまうという問題がありました。

そこで、遺留分減殺請求を廃止し、侵害された遺留分はお金で解決するという遺留分侵害額請求が開始されることとなりました。

3.遺留分侵害額請求の施行日は?

遺留分侵害額請求に関する改正法が施行されたのは2019年7月1日です。

この日以降に発生した相続については遺留分侵害額請求が適用されます。

逆に、2019年6月30日以前に発生した相続の場合には、遺留分侵害額請求は使えず、遺留分減殺請求によって遺留分を取り戻すことになるため、注意しましょう。

遺言書を作成する際は、遺留分に注意しながら内容を考える必要があります。

これから遺言書を作成しようとする方、遺留分を請求したいけれどやり方が分からないという方は、ぜひ相続専門の司法書士がいる当事務所までご相談ください。

 

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