相続財産に不動産がある場合、不動産を取得した相続人は、不動産の名義を被相続人から相続人に変更するための名義変更の登記(相続登記)をする必要があります。
このページの目次
1.不動産登記(相続登記、遺贈による登記など)について
1-1.不動産登記とは
不動産登記とは、土地や建物などの不動産について、誰が所有者なのかといった不動産の権利関係に関する情報や、土地の地積、建物の構造・築年数といった不動産自体に関する情報を登記記録(登記簿)に記録(記載)し、誰でも閲覧できる状態にすることにより、不動産取引を安全かつ円滑に進められるようにするものです。
(参考)不動産登記法
第1条 この法律は、不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するための登記に関する制度について定めることにより、国民の権利の保全を図り、もって取引の安全と円滑に資することを目的とする。
1-2.相続が発生した場合に必要となる不動産登記とは
不動産を所有している人が死亡して相続が発生した場合に必要となる不動産登記としては以下のようなものが存在します。
◎相続登記(相続による所有権移転登記)
相続が発生した場合に最も一般的に行われる不動産登記です。
相続が発生した場合の不動産の名義変更といえば、この相続登記を指すことがほとんどでしょう。
◎遺贈による所有権移転登記
遺言書に不動産を相続人以外の第三者に遺贈すると記載されていた場合、相続登記ではなく、遺贈による所有権移転登記を行うことになります。
相続登記は相続人が不動産を取得するときにのみ行うものですので、相続人以外の第三者(相続人以外の親族を含む)が不動産を取得する場合には、相続登記ではなく、遺贈による所有権移転登記で受遺者に名義変更をします。
なお、遺贈によって相続人が不動産を取得する場合にも遺贈による所有権移転登記をすることはできますが、遺言書で相続人に不動産を取得させる場合には、「相続させる」旨の遺言によって相続登記で名義変更を行うのが一般的です。
◎遺産分割による所有権移転登記
相続財産である不動産について、遺産分割で相続人の一人が取得することとなった場合には、被相続人の名義から当該相続人の名義に直接相続登記で名義変更をするのが通常ですが、一旦相続人全員の共有名義に相続登記をしてから、遺産分割による所有権移転登記(持分移転登記)によって単独名義とすることも可能です。
ただ、あえて相続人全員の共有名義にするメリットはあまりなく、登録免許税が余分にかかってしまうだけなので、早まって相続人全員の名義に相続登記をしないように注意しましょう。
なお、包括遺贈によって相続人以外の第三者に相続財産の一部(例えば相続財産の2分の1など)が遺贈された後、受遺者を含めた相続人間で遺産分割協議がされ、相続人の一人が不動産を取得することとなった場合には、直接相続登記によって当該相続人の名義に変更することはできません。
この場合には、遺贈による受遺者への所有権移転登記(例えば持分2分の1の持分移転登記など)と相続人全員への相続登記(残りの持分について)を行った後、遺産分割による所有権移転登記(持分移転登記)で相続人の単独名義にする必要があります。
2.相続登記の流れ
相続が発生した場合の不動産登記で最も一般的な相続登記の流れは以下のとおりです。
2-1.不動産の最新の登記事項証明書(謄本)を確認
まずは、被相続人が遺した不動産が被相続人の名義になっているかどうかを最新の登記事項証明書(謄本)を取得して確認します。
登記事項証明書(謄本)は日本全国どこの法務局でも取得が可能です。
まれに被相続人の名義ではなく、その先代の名義のままになって相続登記未了の場合がありますので、注意してください。
また、被相続人の登記上の住所がどうなっているか、担保は付いたままになっていないかなどを確認します。
2-2.不動産を取得する相続人を確定する
不動産が被相続人名義になっていることを確認したら、不動産を取得する相続人を確定します。
遺言書によって相続人の一部が取得することになっている場合には、遺産分割を要せずにその相続人が不動産を取得します。
遺言書がない場合には、まずは戸籍を集めて相続人が誰であるかを確定し、その相続人全員で遺産分割協議をして誰が不動産を取得するかを決定します。
不動産を法定相続分で相続人全員が共有する場合には、遺産分割をすることなく相続人全員が取得者となります。
2-3.相続登記の必要書類を集める
不動産を誰が相続するか決まったら、相続登記に必要な書類を集めます。
一般的に必要となる書類は以下のとおりです。
【相続登記の必要書類(遺言書がない場合)】
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍)
- 被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の除附票
- 相続人全員の戸籍謄本(相続開始日以降に取得したもの)
- 不動産を取得する相続人の住民票もしくは戸籍の附票
- 遺産分割協議書+相続人全員の印鑑証明書(遺産分割をする場合)
- 固定資産税納税通知書や固定資産評価証明書など不動産の評価額が記載されたもの(地域よっては不要な場合もあります。)
なお、法定相続情報一覧図がある場合には、被相続人及び相続人の戸籍(場合によっては住民票も)が不要となります。
また、遺言書がある場合には、その遺言書の内容によって必要な書類が変わってきます。
例えば、相続人の一人に相続させる旨の遺言であれば、被相続人の戸籍は最新の除籍謄本だけで構いませんし、遺産分割協議書も不要です。
また、遺言書が法務局で保管されていない自筆証書遺言である場合や秘密証書遺言でる場合には、家庭裁判所で検認を受けたことを証明する検認済証明書が別途必要になります。
2-4.登記申請書を作成し、必要書類と併せて法務局に提出
必要書類がすべて揃ったら、不動産の名義変更に必要な登記申請書を作成します。
登記申請書の雛形(テンプレート)は法務局(法務省)のホームページからダウンロードすることもできますが、自身でWordなどを使用して作成しても構いません。
提出先は不動産の所在地を管轄する法務局になります。
なお、登録免許税の納付も登記申請時に行う必要があります。
納める税額は、相続登記の場合、固定資産評価額の1000分の4になります。
書面で相続登記を申請する場合には、登録免許税額に相当する額の収入印紙を郵便局か法務局で購入し、申請書に貼付します。
電子申請(オンライン申請)をする場合には、インターネットバンキングで納付します(添付書類を書面で提出する場合には、収入印紙でも納付できます。)。
3.当事務所のサービスについて
当事務所では、相続登記に関して様々なサービスを提供しております。
◎不動産の調査
不動産の登記事項証明書(謄本)や登記情報、公図などを取得して相続財産となる不動産を調査・確定します。
◎相続人の調査
戸籍を集めて内容を確認し、相続登記に関与することになる相続人を確定します。
◎必要書類の収集
戸籍や住民票、固定資産評価証明書など相続登記の必要書類を請求・取得します。
◎遺産分割協議書、相続関係説明図の作成
登記申請書に添付する遺産分割協議書や相続関係説明図を作成します。各相続人の方とのやり取りもお任せください。
◎登記申請書の作成・チェック
不動産登記のプロである司法書士が相続登記の申請書を作成します。ご自身で作成した申請書のチェックも可能です。
◎法定相続情報一覧図の作成・交付申請
各種相続手続きに便利な法定相続情報一覧図を取得するための必要書類の収集から申請までを代行(代理)いたします。
◎相続登記まるごとお任せ
相続登記に必要な一連の調査や必要書類の取得・作成、相続登記の申請までを司法書士に丸投げできます。
◎相続登記申請のみお任せ
必要書類の収集・作成はご自身でされるという方は、相続登記の申請(登記申請書の作成を含む)だけをお任せ頂くこともできます。
相続登記を義務化する法改正が可決され、2024年までに施行されます。
相続登記が未了の方やこれから相続登記をしようとする方は、お早めにご相談ください。