相続登記の登録免許税について

登録免許税は不動産や船舶の登記であったり、著作権の登録などを行う際にかかってくる税金(国税)ですが、死亡した被相続人名義の不動産について名義変更をする際にも、相続税とは別にかかってきます。

ここでは、相続が発生した場合における不動産の名義変更(相続登記)にかかる登録免許税について解説します。

1.相続登記の登録免許税について

不動産の登録免許税の計算は、課税価格×税率で計算します。

1-1.課税価格について

相続によって不動産の所有権(持分)や地上権・賃借権などの用益権を移転する場合の課税価格は、不動産の時価や路線価ではなく、固定資産課税台帳に記載された不動産の評価額(価格)を使います。
被相続人名義の不動産が被相続人の単独所有ではなく、共有であった場合には、不動産の評価額(価格)を被相続人が有している共有持分割合で按分した金額が課税価格となります。

また、相続によって抵当権や根抵当権などの担保権を移転する場合の課税価格は、債権額や極度額となります。

なお、課税価格は1000円未満が切り捨てとなるため、下3桁は必ず0(ゼロ)になります。

1-2.税率について

次に相続登記の税率ですが、これは登記の内容によって変わってきます。

最も多く行われている「相続」を原因とする所有権移転登記の税率は、1000分の4(0.4%)となっています。
これは相続人が誰であるかを問わず一律同じ税率です。

次に、被相続人が遺言書を残しており、遺言書で不動産を○○に「遺贈する」となっていた場合、「遺贈」を原因とする所有権移転登記を行いますが、この場合の登録免許税の税率は1000分の20(2%)となっています。
ただし、遺贈の相手方が相続人であった場合には、「相続」を原因とする所有権移転登記とのバランスをとるため、税率は1000分の4(0.4%)となります(相続人であることを 証明するために別途戸籍謄本等の添付が必要となります。)。
相続人以外に不動産を遺贈する場合には税率が5倍となり、登録免許税額が高額になってしまうことがあるため、注意が必要です。

法定相続分どおりに相続人全員の共有名義に相続登記をした後に遺産分割で共有持分を移転することになった場合、「遺産分割」を原因とする所有権移転登記をすることになりますが、この場合の登録免許税の税率は遺贈と同じく1000分の20(2%)です。
相続分の指定や包括遺贈によって共有名義になった不動産について、遺産分割による持分移転をする場合も同じです。
「遺贈」を原因とする所有権移転登記の場合と異なり、相続人に対する持分移転であっても、税率は変わりません。

なお、「相続」を原因とする抵当権・根抵当権の移転登記の登録免許税の税率は1000分の1(0.1%)、「相続」を原因とする地上権・賃借権などの用益権の移転登記の登録免許税の税率は1000分の2(0.2%)となっています。

課税価格に税率を乗じて計算された登録免許税額は100円未満が切り捨てとなるため、下2桁は必ず0(ゼロ)になります。
また、計算した登録免許税額が1000円に満たない場合には、登録免許税額は1000円となります。

2.具体的な登録免許税の計算について

以下、いくつか具体例を挙げて相続登記における登録免許税の計算方法をみていきましょう。

2-1.相続人が一人の場合

被相続人A名義の不動産が土地1筆(評価額21,600,230円)と建物1棟(評価額2,834,403円)で、相続人がBのみであった場合、「相続」を原因とするB名義への所有権移転登記の登録免許税額の計算は次のようになります。

①21,600,230円+2,834,403円=24,434,633円

②課税価格=24,434,000円(1000円未満切り捨て)

③24,434,000円×4/1000=97,736円

④登録免許税額=97,700円(100円未満切り捨て)

2-2.遺贈があった場合

被相続人Aが次のような遺言を残していたとします。
「遺言者は、遺言者の有する甲土地を遺言者の長男Bに遺贈し、乙土地を長男Bの妻Cに遺贈する。」
甲土地の評価額が11,351,942円、乙土地の評価額が9,003,429円であった場合、「遺贈」を原因とするB及びCそれぞれへの所有権移転登記の登録免許税額の計算は次のようになります(B名義への所有権移転登記とC名義への所有権移転登記は別々の申請書を作成することになります)。

【長男B(相続人)への所有権移転登記】

①課税価格=11,351,000円(1000円未満切り捨て)

②11,351,000円×4/1000=45,404円

③登録免許税額=45,400円(100円未満切り捨て)

【長男Bの妻C(相続人以外)への所有権移転登記】

①課税価格=9,003,000円(1000円未満切り捨て)

②9,003,000円×20/1000=180,060円

③登録免許税額=180,000円(100円未満切り捨て)

2-3.遺産分割があった場合

被相続人A名義の土地1筆(評価額18,304,600円)と建物1棟(評価額3,104,450円)について法定相続分による相続登記(持分2分の1B、持分2分の1C)がされた後、遺産分割協議で相続人Bが土地と建物を単独相続することとなった場合、「遺産分割」を原因とするC持分の移転登記の登録免許税額の計算は次のようになります。

①(18,304,600円+3,104,450円)×1/2(C持分)=10,704,525円(移転した持分の価格)

②課税価格=10,704,000円(1000円未満切り捨て)

③10,704,000円×20/1000=214,080円

④登録免許税額=214,000円(100円未満切り捨て)

3.登録免許税の納付方法

登録免許税の納付方法には、①印紙納付、②電子納付、③現金納付の3つの方法があります。
このうち②電子納付は、オンライン申請(添付書類を書面で提出する場合=特例方式を含む。)の場合にのみ利用することができます。
そのため、書面申請(登記申請書を書面で作成する方法による申請方式)の場合には、①印紙納付もしくは③現金納付のいずれかになりますが、①印紙納付が利用されることが多いです。

③現金納付は、銀行や税務署で納付書を使って現金で納付し、領収証書を登録免許税納付用紙に貼付して登記申請書と一緒に提出するものですが、登録免許税額が大きいために印紙を購入・貼付するのが大変な場合などに利用されます。

①印紙納付は、登録免許税額に相当する分の収入印紙を法務局や郵便局で購入し、登記申請書や登録免許税納付用紙に貼付して提出します。
登録免許税納付用紙に収入印紙を貼付する場合には、登記申請書と登録免許税納付用紙をホチキス止めした上で、ページの綴り目に契印をします。
なお、貼付した収入印紙自体には割印は不要です。

4.登録免許税額の計算を間違って納付してしまった場合

相続登記における登録免許税額の計算は時には複雑なものとなり、一般の方が自分で計算をすると金額を間違ってしまうこともよくあります。

正しい登録免許税の額よりも少ない額を納付してしまった場合には、追加で不足分を納付すればよいだけなので、さほど問題ではありません。

一方、正しい登録免許税の額よりも多く納付してしまった場合には、税金の還付手続きをしなければならないため、時間と手間がかかってしまいます(東京の場合だと、還付手続きをとってから実際に税金が還付されるまでに1~2か月ほどかかります。)。
なお、過大納付額が1000円以下である場合には、多く納め過ぎた分を放棄することができます。

相続登記の登録免許税の計算に困ったら、司法書士にご相談ください。

 

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